華栄の丘

今、読んでいる本は宮城谷昌光の「華栄の丘」。紀元前、中国の春秋戦国時代に存在した「宋」という国の宰相を務めた「華元」という人物が主人公。当時、晋という大国と楚に挟まれて、小国ゆえ、あえて負けて、真の勝ちを得ることに骨身を砕いた人物だ。この本を読むのはもう3回目になるが、宮城谷作品の中では好きな小説の一つになっている。
宮城谷の小説に触れて、かれこれ15年ぐらいになるだろう。それまで自分の知識の中では曖昧だった中国の古代の情景が、あまりにも鮮やかに描かれていたことで、次から次へと貪るように読んだことを憶えている。また、それまで聞いたことも見たこともない熟語や漢字の使い方に驚き、自分の日常会話の中に取り込めないかとワクワクしたものだ。
気に入った小説は3〜4年経てば再度、読むことにしている。その時の自分の精神状態や、仕事面で置かれた状況などによって、また違った読後感が味わえるのも楽しみだ。宮城谷作品はまさにこうした再読、再々読にうってつけと思う。
さて今回は、どんな読後感に浸れるのか。多分、当分はあえて負けて、真の勝ちを得るという生き方を実践しようとするのだろう。