「お伊勢」は「お多賀」の子でござる♪

まだ私が小さかった頃、母親が時々「お伊勢へ参らばお多賀へ参れ♪ お伊勢はお多賀の子でござる♪」と、俗謡を口にしていたのを覚えている。当時は意味も分からず、また成人してからは思い出すこともなかった。 しかし最近、改めて「古事記」(真福寺本)を読…

常陸の地に残る親鸞の教え

夏、真っ盛りの7月の日曜日、栃木県真岡市にある「専修寺(せんじゅじ)」に行ってきた。親鸞が建立した唯一の寺と言われ、京で本願寺8世「蓮如」によって本願寺教団が大発展を遂げつつあった室町時代中期(ちょうど応仁の乱の頃)、今の三重県津市一身田…

次は家康「討ち死に」ですか?三谷さん

先日(9月25日)、放映されたNHK大河ドラマ「真田丸」を観ていて、「エッ?」と思ったのは、私だけではないだろう。片手間に観ていたので細部はうろ覚えだが、いわゆる家康と秀頼の二条城での対面の際、秀頼の警護役を買って出た加藤清正の、その豊臣…

吉野に続くもう一つの天皇家

「今の(昭和)天皇は偽天皇であり、自分こそ正真正銘の天皇だ。現天皇を追放し、自分を即位させてほしい」。終戦直後の1945年(昭和20年)末、GHQ(連合国軍総司令部)に、こんなことを訴え出た人物がいた。 そして、GHQが翌年1月、この訴えを…

「踰年」にしてはどうだろう?

9月13日付けの朝日新聞によると、アンケートの結果、今の天皇陛下の「生前退位」に賛成する国民は「91%」、「女性天皇」に賛同する意見も「72%」に達した。 今上天皇の「お言葉」からほぼ1カ月。生前退位がこれほどまでに高い支持を得ているのは、…

「満州」は元々、日本だった

そもそも歴史には「正史」のほかに、異聞や異説をまとめた「稗史」(はいし)と呼ばれるものがある。モンゴルの英雄、チンギス・ハーンの偉業を伝える「元朝秘史」も、その一つだろう。 「上天より命ありて生まれたる蒼き狼ありき。その妻なる生白き牝鹿あり…

「EECの母」は黒い瞳の伯爵夫人

今年のノーベル平和賞がEU(欧州連合)に授与されることが決まった。「(EUの)前身の時代も含め、60年以上にわたって欧州における平和と和解、民主主義と人権の向上に貢献した」(朝日新聞)ことが、授賞の理由という。 振り返ると1952年、第2次…

蘇る藤原不比等の亡霊

10月5日、政府が「女性宮家」を創設することの是非や、そのあり方を巡って「皇室典範」の見直しに向けた「論点整理」を公表した。 どうして今、女性宮家の創設なのか。 それはつまり、現在の皇室典範にキチンとした規定があるわけではないのだが、このま…

異民族が標榜する中華帝国

中国って国(正確には中国大陸の統一政権)は歴史上、国力が充実してくると必ず、今で言うところの「覇権主義」で領土拡大に走る。 古くは「隋」の煬帝による高句麗への3度の侵攻(この無理な負担により隋は滅んだ)。そして、その後を継いだ「唐」の太宗(…

シーボルトとバクーニンの邂逅

以前、直木賞作家・葉室麟の「星火瞬く」(講談社)を読み、この小説のストーリーは本当に歴史的事実に基づいているのか、ズッと気になっていた。 小説では、江戸時代後期に、幕府禁制の日本地図を持ち出そうとして国外追放処分になったドイツ人医師・シーボ…

雪の降る日に歴史は変わる

江戸・東京に権力が座を占めて約400年。その間に、劇的な政治的事件はいくつも起こったが、その中で、日本史上でも決定的な役割を果たした「事件」が、3つある。筆者の独断を許してもらえるならば、時代順に挙げて、1702年の赤穂浪士吉良邸討ち入り…

「虞美人」と丸ちゃん

「立てばシャクヤク 座ればボタン 歩く姿はユリの花」。今となってはもう誰も口にしないが、昔は美人を例える際によく使われた。私自身、ボタンとユリの花は知っているが、シャクヤクは知らない。見たことはあるかもしれないが、これがシャクヤクだ、と意識…

維新遷都計画、かくて首都は大阪に

大阪「都構想」や維新政治塾の盛り上がりを見ていると、この国の首都を大阪に移し、人心を一新して、新たな時代を迎えてもいいのではないかと思ってしまう。実際、過去には国会でも首都移転が積極的に議論された時もあったのだから、そんなに突飛な話でもな…

清盛、人気がないね〜

今年のNHK大河ドラマ「平清盛」の視聴率が冴えないようだ。3月11日に放映された第10回は知らないが、前週の4日については視聴率が13・4%だったことが、ビデオリサーチの発表で分かった。昨年、放送された「江〜姫たちの戦国〜」では、13%台…

「南無阿弥陀仏」も称えない

五木寛之の小説「親鸞」(上・下巻、講談社、2010年1月刊)を読了。面白い小説だった。これまでにも、親鸞を主人公にした小説や戯曲は少なくない。吉川英治、丹羽文雄、津本陽などがいる。そして古くは村上浪六の伝記的物語もある。 五木といえば、60…

トンネルを抜けると「南国」だった

小説は、まずエンターテイメントである必要があると思う。いかに多くの人に読まれ、そういった人々にいかに感動を与えるかが、その小説の評価軸の一つだろう。 その意味でいうと、昭和の大作家・川端康成の「雪国」って、一体何だろうと思ってしまう。ハッキ…

勝海舟の思い

これまで全く知られていなかった人物を主人公にし、その上で、その主人公を取り巻く周辺人物として、歴史的によく知られている人物を間接的に描いていく。こんな手法も、歴史小説の世界ではあったのだなあ、と思わせる小説に出会った。諸田玲子の「お順 勝海…

孔明の涙

「泣いて馬謖を斬る」という言葉がある。どれほど有能な人物であっても、失敗をおかした時は責任を取らされる、とでもいった意味だろうか。今でも、この日本ではよく使われる。そして、この言葉が生まれた経緯については、三国志自体がビジネス書などで取り…

実在しなかった聖徳太子

日本人にとって歴史上、一番有名な人物といえば、それは間違いなく「聖徳太子」だろう。以前は、1万円札に肖像が描かれていたし、教科書的にいえば「冠位12階・17条憲法の制定」「随との国交樹立」「仏典の注釈書・三経義疏(さんぎょうぎしょ)を記し…

万世一系による君臨の血脈

あの大震災から4カ月が経つというのに、未だに精神的な動揺が続いている。一度に数万人が亡くなるという事態に遭遇し、人生観だけでなく、これまでの歴史観や文明観といった様々な精神的な拠り所を喪失してしまったようだ。こんなことを漠然と感じている人…

藤原不比等

藤原不比等と言えば、今では、古代史ファンで知らない人はいないだろう。ここ20年ほどの間に、多くの古代史ファンに知られるようになった。歴史の教科書には決して出てこない。不比等が知られるようになったのは多分、黒岩重吾の小説によるところが大きい…

張作霖

浅田次郎の「中原の虹」全4巻を読み終えた。1巻を読み始めてから3カ月ほどかかったのだろうか。一気に読み進めればいいのに、いつも5〜6冊を同時並行で読むので、こんなに時間がかかってしまった。いや、それにしても面白い小説だった。舞台は張作霖の…

遣隋使

「遣隋使」と言えば、およそ誰もが知っている歴史的事実であり、さらに聖徳太子が小野妹子を派遣したということや、「日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す。つつがなきや」という国書が、隋の皇帝・煬帝を怒らせたというところまでは、よく知られ…

周瑜の死

先週日曜日(16日)の夜、テレビ朝日系列で放映された映画「レッドクリフ パート1」。 観た方も多いだろう。私もその内の一人だが、案の定、劉備と諸葛孔明が聖人君子のように扱われていたのには、違和感を覚えてしまった。史実では、特に劉備については…

蘇我氏の謎

謎に満ちた古代史上、最大の豪族と言えば、間違いなく「蘇我氏」が挙げられる。稲目に始まり馬子、蝦夷、入鹿と続いた蘇我本宗家は、その有名さに比べて今なお未解明の点が多く、また歴史学会においても、共通認識が得られていない点が少なくない。 そもそも…

最後の宦官・孫耀庭

「最後の宦官秘聞」(2002年刊、NHK出版)を読了。この本自体、副題に「ラストエンペラー溥儀に仕えて」とある通り、清朝滅亡から満州国に向かった時代、男でない男の集団の中の一人、孫耀庭が語る宮廷秘話を、中国の作家・賈英華がまとめたもの。 そ…

十津川郷士

司馬遼太郎の歴史エッセー「街道をゆく」シリーズの第12巻は、舞台が奈良県の十津川村だ。このシリーズ自体、今から30年ほど前に週刊朝日に連載されていたものが、その後順次、朝日新聞社から単行本化されたものだ。 そして「十津川街道」と副題が付いた…

図解 日本史

歴史ブームらしい。それもあってか、この秋、歴史雑誌が2誌、創刊された。 それを報じた朝日新聞の11月22日付け文化面によると【「戦国2大人気武将を徹底解剖 真田幸村 伊達政宗」。先陣を切って9月に創刊したのは月刊誌「歴史人」(KKベストセラー…

保元の乱と平治の乱

平安時代末期に起きた「保元の乱」と「平治の乱」を読み解き、そこに至った背景を理解するのはなかなか難しい。 まずは保元の乱。後白河天皇を中心に源義朝、平清盛、関白・藤原忠通が加わる勢力と、対する崇徳上皇側には、義朝の父・為義と義朝の弟・為朝、…

バトゥ・ウルス

いい作家だと思う。小前亮のこと。「蒼き狼の血脈」(09年11月刊、文藝春秋)を読み終えた。小前の小説を読むのは3冊目となる。 1冊目となる最初は、中国で実質、唐王朝を創設した李世民を主人公にした「李世民」(05年刊)。2年ほど前に読んだ。ち…