2010-01-01から1年間の記事一覧

蘇我氏の謎

謎に満ちた古代史上、最大の豪族と言えば、間違いなく「蘇我氏」が挙げられる。稲目に始まり馬子、蝦夷、入鹿と続いた蘇我本宗家は、その有名さに比べて今なお未解明の点が多く、また歴史学会においても、共通認識が得られていない点が少なくない。 そもそも…

最後の宦官・孫耀庭

「最後の宦官秘聞」(2002年刊、NHK出版)を読了。この本自体、副題に「ラストエンペラー溥儀に仕えて」とある通り、清朝滅亡から満州国に向かった時代、男でない男の集団の中の一人、孫耀庭が語る宮廷秘話を、中国の作家・賈英華がまとめたもの。 そ…

十津川郷士

司馬遼太郎の歴史エッセー「街道をゆく」シリーズの第12巻は、舞台が奈良県の十津川村だ。このシリーズ自体、今から30年ほど前に週刊朝日に連載されていたものが、その後順次、朝日新聞社から単行本化されたものだ。 そして「十津川街道」と副題が付いた…

図解 日本史

歴史ブームらしい。それもあってか、この秋、歴史雑誌が2誌、創刊された。 それを報じた朝日新聞の11月22日付け文化面によると【「戦国2大人気武将を徹底解剖 真田幸村 伊達政宗」。先陣を切って9月に創刊したのは月刊誌「歴史人」(KKベストセラー…

保元の乱と平治の乱

平安時代末期に起きた「保元の乱」と「平治の乱」を読み解き、そこに至った背景を理解するのはなかなか難しい。 まずは保元の乱。後白河天皇を中心に源義朝、平清盛、関白・藤原忠通が加わる勢力と、対する崇徳上皇側には、義朝の父・為義と義朝の弟・為朝、…

バトゥ・ウルス

いい作家だと思う。小前亮のこと。「蒼き狼の血脈」(09年11月刊、文藝春秋)を読み終えた。小前の小説を読むのは3冊目となる。 1冊目となる最初は、中国で実質、唐王朝を創設した李世民を主人公にした「李世民」(05年刊)。2年ほど前に読んだ。ち…

趙高、高力士、魏忠賢

本日から、宮城谷昌光の「三国志」第8巻を読み始める。 で、ということでもないのだが、改めて宦官について考えてしまう。というのも、三国志の英雄・曹操は宦官の孫で(実際は養子)、後漢末、宦官による政治の壟断が顕著になり、こうした宦官集団を徹底的…

箸墓古墳

「三国志がみた倭人たち」(山川出版社)を読了。10年ほど前に出版された古い本なのだが、書名につられて、つい図書館で借りてしまった。著者は国立歴史民族博物館の研究者や大学教授など10数人で、副題は「魏志倭人伝の考古学」となっており、「ここに…

「記紀」の不可解さ

日本に、中国や朝鮮半島から文字が伝わった時期については、今のところ定説がない。一応、中学校の教科書などでは西暦300年代末頃、百済から王仁(わに)博士が「論語」10巻と、1千字の文字、いわゆる「千字文」1巻をもたらしたのが最初だと記述して…

真田幸村の遺言

歴史小説の中には、アッと驚く着想に脱帽させられてしまうことがよくある。最近、読んだ「覇の刺客 真田幸村の遺言」(鳥羽亮、祥伝社)も、その一つだ。 徳川第8代将軍・吉宗が御三家である紀伊の藩主から将軍に上り詰めるまでの話だが、その吉宗、実は豊…

王昭君

以前から「匈奴」が気にかかっていた。紀元前5世紀頃から、モンゴル高原を中心とした北アジア一帯に、一大勢力を築いた遊牧民族というか、遊牧国家のことだ。そして、中国の五胡十六国時代を境に、内部分裂などを繰り返し、忽然と歴史上から姿を消してしま…

三内丸山遺跡

青森市にある三内丸山遺跡に一度、行ってみたいと思いつつ、まだ行けないでいる。20年ほど前、青森県が野球場を建設するのにあたって事前調査を行った際、この遺跡が縄文時代(今から約1万2000年前から約2300年前)の大規模な集落跡(約5500…

大久保彦左衛門

「新三河物語」(新潮社、全3巻)を読み終えた。宮城谷昌光の小説だが、これまで宮城谷が題材として取り上げていた中国の古代が物語の舞台ではないので、なんとなく敬遠していた。しかし宮城谷ファンの一人としては、そうとも言っておれず、宮城谷が日本の…

高野新笠

2001年の天皇誕生日前の恒例の記者会見において、今上天皇(明仁天皇)は、翌年に予定されているサッカーワールドカップの日韓共催に関する「おことば」の中で「桓武天皇の母親は百済の武寧王の子孫であると『続日本紀』に記されていることに、韓国との…

逢坂の関

《夜をこめて 鳥の空音は はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ》(清少納言)。「小倉百人一首」にも入っている和歌の一つだ。この歌の意味って、こんなことらしい。「夜が深いのに、鶏のうそ鳴きで関所を開けさせようとしても、逢坂の関ではそうもいきませ…

孟嘗君

いわゆる「食客3千人」とも言われた「戦国4君」といえば、斉の孟嘗君(もうしょうくん)、趙の平原君(へいげんくん)、魏の信陵君(しんりょうくん)、楚の春申君(しゅんしんくん)のことだ。4君が活躍した舞台は古代中国。紀元前770年、周の平王は…

太祖王建

それまで「点」でしか理解し得ていなかったその時々の歴史の事象が、歴史の大きな流れの中で、「1本の線」としてつながり始めた時、歴史愛好家の私はいささか喜びを感じてしまう。その一つの例が、最近になってようやく朝鮮半島における各王朝の興亡が、私…

オランカイ

20年振りに司馬遼太郎の「韃靼疾風録」を読み返した。前々回のこのブログでも書いたが、小前亮の小説「十八の子 李巌と李自成」を読み、中国の「明」から「清」への変遷を題材にした小説によって、改めてこの時代を振り返ってみたかった。で、そういえばと…

燕雲16州

日本人にとって、歴代の中国王朝の中で一番、親近感を感じるのは、何と言っても「唐」(618年〜907年)だろう。日本はこの時代、初の女帝として有名な推古天皇の飛鳥時代に始まり、天武・持統天皇から聖武天皇へと続く奈良時代、そして、桓武天皇が開…

「順」王朝

13世紀以降の中国の王朝を教科書風に順に並べると、「元」→「明」→「清」と続く。しかし正確にいうと、明と清の間には明末、農民反乱の指導者として北京を包囲し、明の最後の皇帝となる第17代の崇禎帝(すうていてい)に紫禁城の北にある景山で首を括ら…

胡亥

「秦を滅ぼすのは胡なり」。胡(こ)とは異民族のことであり、当時だと、中国北方のオルドス地方に居住(?)していた騎馬民族の「匈奴」などが、これにあたる。秦の始皇帝は晩年、方士(呪術や占星術などを行う学者)の一人、盧生(ろせい)が提出した予言…

承平・天慶の乱

まだ1回しか放映されていないのに、今年のNHKの大河ドラマ「龍馬伝」は、すでに女性を中心に人気が高いらしい。当然それは、主人公の坂本龍馬を歌手の福山雅治が演じるということによるのは間違いないのだが、かくいう自分は、正月3が日ということもあ…

乾隆帝

以前から中国の「清朝」(1644年〜1912年)、とりわけ、隆盛を極めた第6代皇帝の乾隆帝(けんりゅうてい)の時代をもう少し理解しておきたいと思っていた。というのも、たかだか50〜60万人の満州族が建てた征服王朝である清が、いったいどうや…