2011-01-01から1年間の記事一覧

「南無阿弥陀仏」も称えない

五木寛之の小説「親鸞」(上・下巻、講談社、2010年1月刊)を読了。面白い小説だった。これまでにも、親鸞を主人公にした小説や戯曲は少なくない。吉川英治、丹羽文雄、津本陽などがいる。そして古くは村上浪六の伝記的物語もある。 五木といえば、60…

トンネルを抜けると「南国」だった

小説は、まずエンターテイメントである必要があると思う。いかに多くの人に読まれ、そういった人々にいかに感動を与えるかが、その小説の評価軸の一つだろう。 その意味でいうと、昭和の大作家・川端康成の「雪国」って、一体何だろうと思ってしまう。ハッキ…

勝海舟の思い

これまで全く知られていなかった人物を主人公にし、その上で、その主人公を取り巻く周辺人物として、歴史的によく知られている人物を間接的に描いていく。こんな手法も、歴史小説の世界ではあったのだなあ、と思わせる小説に出会った。諸田玲子の「お順 勝海…

孔明の涙

「泣いて馬謖を斬る」という言葉がある。どれほど有能な人物であっても、失敗をおかした時は責任を取らされる、とでもいった意味だろうか。今でも、この日本ではよく使われる。そして、この言葉が生まれた経緯については、三国志自体がビジネス書などで取り…

実在しなかった聖徳太子

日本人にとって歴史上、一番有名な人物といえば、それは間違いなく「聖徳太子」だろう。以前は、1万円札に肖像が描かれていたし、教科書的にいえば「冠位12階・17条憲法の制定」「随との国交樹立」「仏典の注釈書・三経義疏(さんぎょうぎしょ)を記し…

万世一系による君臨の血脈

あの大震災から4カ月が経つというのに、未だに精神的な動揺が続いている。一度に数万人が亡くなるという事態に遭遇し、人生観だけでなく、これまでの歴史観や文明観といった様々な精神的な拠り所を喪失してしまったようだ。こんなことを漠然と感じている人…

藤原不比等

藤原不比等と言えば、今では、古代史ファンで知らない人はいないだろう。ここ20年ほどの間に、多くの古代史ファンに知られるようになった。歴史の教科書には決して出てこない。不比等が知られるようになったのは多分、黒岩重吾の小説によるところが大きい…

張作霖

浅田次郎の「中原の虹」全4巻を読み終えた。1巻を読み始めてから3カ月ほどかかったのだろうか。一気に読み進めればいいのに、いつも5〜6冊を同時並行で読むので、こんなに時間がかかってしまった。いや、それにしても面白い小説だった。舞台は張作霖の…

遣隋使

「遣隋使」と言えば、およそ誰もが知っている歴史的事実であり、さらに聖徳太子が小野妹子を派遣したということや、「日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す。つつがなきや」という国書が、隋の皇帝・煬帝を怒らせたというところまでは、よく知られ…

周瑜の死

先週日曜日(16日)の夜、テレビ朝日系列で放映された映画「レッドクリフ パート1」。 観た方も多いだろう。私もその内の一人だが、案の定、劉備と諸葛孔明が聖人君子のように扱われていたのには、違和感を覚えてしまった。史実では、特に劉備については…