承平・天慶の乱

まだ1回しか放映されていないのに、今年のNHKの大河ドラマ龍馬伝」は、すでに女性を中心に人気が高いらしい。当然それは、主人公の坂本龍馬を歌手の福山雅治が演じるということによるのは間違いないのだが、かくいう自分は、正月3が日ということもあり、お屠蘇気分でうたた寝をしてしまい、1月3日の第1回を見そこなってしまった。

第1回の放映を、満を持して待ちかまえていた我が連れ合いなどは、もう明後日の第2回の放映を楽しみにしている。まあ、自分としても、明日午後の第1回の再放送を見て、第2回の放映からはキチンと夜8時、テレビの前に座ることにでもするか、といったところだが、それにしても、坂本龍馬については今一つ、興味が湧かないことも事実である。

というのも、坂本龍馬が歴史の表舞台に登場してからのさまざまな事績は、日本で初めて新婚旅行をしたということも含めて、これまで書籍などを通じてほとんど知り尽くしているからだ。後、どうしても知りたいのは幼少の頃、どんな環境で育ったのか、それと多分、年末の最後の放映になるのだろうが、誰が龍馬の暗殺犯とされるのだろうかという点ぐらいだ。ちなみに前々回、放映された「篤姫」では、幕府の京都見回り組の一人、佐々木唯三郎を暗示させるような内容だったと記憶しているが。

大河ドラマは、この篤姫といい、前回「天地人」の直江兼続といい、自分があまり知り得ていない人物が主人公になった時、俄然、興味が湧いてくる。その年は1年間、それこそ眦(まなじり)を決してテレビに向かうことになる。篤姫については、これまで名前ぐらいしか知らなかったし、直江兼続についても後半生は理解していたものの、上杉謙信急死後の「御館の乱」に至るまでの、上杉景勝景虎の争いは頭の中で整理されていなかった。

龍馬伝の脚本は「HERO」や「救命病棟24時」を手がけた福田靖。これまで、司馬遼太郎の小説「龍馬がゆく」を中心に描かれてきた龍馬像をどこまで変えられるのか、チョット斜め目線で見ていくのもいいかも知れない。

大河ドラマと言えば、昭和38年の「花の生涯」から数えて、今回の龍馬伝が49シリーズ目となる。昭和48年に放映された齋藤道三織田信長を主人公にした「国盗り物語」以降、そのほとんどを見てきているのだが、以前から気になっていたのが、どうして古代を題材にしないのかということだ。遡ってみると、これまで最も古い時代を題材にしたのは昭和51年の「風と雲と虹と」。平安時代も100年ほど経過した10世紀前半に起きた平将門藤原純友の乱、いわゆる「承平・天慶の乱」(じょうへい・てんぎょうのらん)が一番古い。

奈良時代飛鳥時代と、いくらでも大河ドラマ向きの題材はあると思うのだが。たとえば、奈良時代恵美押勝坂上田村麻呂飛鳥時代だと当然、672年に起きた「壬申の乱」。もっと遡ると645年の「乙巳の変」(いっしのへん、大化の改新ともいう)などがある。

しかし、しかしである。この時代の政権争いには、いずれも今の天皇家につながる当時の各天皇が絡んでいるという事実も見逃せない。だとするならば、これは天皇家に対する配慮で、どうしても大河ドラマとして扱うわけにはいかないのだろう。最近、韓国や中国の古代を題材にしたテレビ・映画を見る機会が多いだけに、余計こんなことを考えてしまう。